RADIUSとは?その仕組みと用途について説明

現代社会において、ネットワークセキュリティーは企業にとって最重要課題の1つです。社内ネットワークへの不正アクセスや情報漏洩は、企業の信用失墜や経済的損失に繋がりかねません。そこで、ネットワークセキュリティー対策として注目されているのがRADIUSです。RADIUSは、古くから利用されている認証システムですが、クラウドやIoTの普及に伴い、その重要性はますます高まっています。 本記事では、RADIUSとは何か、その仕組みやメリット・デメリット、導入方法、最新動向などをわかりやすく解説します。RADIUSの導入を検討している方、ネットワークセキュリティー強化に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
RADIUSとは?
RADIUS (Remote Authentication Dial-In User Service) とは、ネットワークアクセス認証のためのプロトコルです。ユーザーがネットワークにアクセスする際、そのユーザーが “本当に許可されたユーザーなのか” を確認するための仕組みです。
RADIUSは、1990年代初頭に、ダイヤルアップ接続の認証方式として開発されました。 当時は、モデムを使用してインターネットに接続するのが一般的で、RADIUSは、ユーザーの認証と課金を行うために利用されていました。その後、インターネットの普及に伴い、Wi-FiやVPNなどのネットワークアクセス認証にも利用されるようになりました。
例えば、会社のWi-Fiに接続する際、IDとパスワードを入力すると思いますが、RADIUSはこのIDとパスワードが正しいかどうかを、専用のサーバーでチェックする役割を担っています。
RADIUSの仕組みと動作原理
RADIUSは、クライアント/サーバー型のアーキテクチャを採用しています。 これは、レストランで注文する状況に似ています。お客様がサプリカント、ウェイターがクライアント、シェフがサーバーの役割を担います。お客様がウェイターに注文を伝えると、ウェイターはそれをシェフに伝えます。シェフが料理を完成させると、ウェイターがお客様に料理を届けます。
RADIUSの場合、以下のような3つの要素が連携して動作します。
サプリカント
ネットワークにアクセスしようとするユーザーやデバイス。パソコン、スマートフォン、タブレットなどがこれにあたります。お客様のように、サービスを要求する側です。
RADIUSクライアント
ユーザーからのアクセス要求を受け付け、RADIUSサーバーに認証要求を送信する機器。ネットワーク機器 (ルーター、スイッチ、無線LANアクセスポイントなど) が該当します。ウェイターのように、サプリカントとサーバーの間で情報を仲介する役割を担います。
RADIUSサーバー
ユーザー認証や認可を行うサーバー。ユーザー名やパスワードなどの認証情報を管理し、アクセス許可/拒否を決定します。データベースやActive Directoryと連携して認証を行うことも可能です。

ユーザーがネットワークにアクセスしようとすると、以下の流れで認証が行われます。
- サプリカント (例:社員のノートパソコン) がRADIUSクライアント (例:会社のWi-Fiアクセスポイント) にアクセス要求を送信します。
- RADIUSクライアントは、サプリカントから受け取ったユーザー名とパスワードなどの認証情報を、RADIUSサーバーに送信します。
- RADIUSサーバーは、受け取った認証情報が正しいかどうかを、内部のデータベースやActive Directoryと照合して検証します。RADIUSサーバーは、ローカルデータベース、外部データベース、LDAP、その他の認証サーバーなど、様々な認証方法を使用することができます。
- 認証情報が正しい場合はアクセスを許可し、正しくない場合はアクセスを拒否します。この結果はRADIUSクライアントに返されます。
- RADIUSクライアントは、RADIUSサーバーから受け取った結果に基づいて、サプリカントにアクセス許可/拒否を通知します。
RADIUSの用途
RADIUSは、主にネットワークアクセス認証に使用されますが、その他にも様々な用途があります。
RADIUSは、企業や組織のWi-FiネットワークやVPNへのアクセスを制御するために広く利用されています。 ユーザーは、RADIUSサーバーに登録されたユーザー名とパスワードを使用してネットワークにアクセスします。これにより、不正アクセスを防止し、セキュリティーを強化することができます。
RADIUSは、IEEE 802.1X 標準と組み合わせて使用されることが多く、ネットワークアクセス制御 (NAC) を実現します。 802.1Xは、ポートベースのネットワークアクセス制御の規格であり、認証されていないデバイスがネットワークにアクセスすることを防ぎます。RADIUSサーバーは、802.1X認証のバックエンドとして機能し、ユーザーの認証と認可を行います。
例えば、多くの企業では、従業員だけがアクセスできるWi-Fiネットワークを構築するためにRADIUSを利用しています。従業員は、各自に割り当てられたIDとパスワードを使用してWi-Fiに接続することで、安全に社内ネットワークにアクセスすることができます。

ネットワーク機器の認証
RADIUSは、ネットワーク機器 (ルーター、スイッチなど) の認証にも使用できます。 管理者は、RADIUSサーバーを使用してネットワーク機器へのアクセスを制限し、不正アクセスを防止できます。
例えば、ネットワーク機器の設定を変更できるユーザーを制限するためにRADIUSを利用することができます。RADIUSサーバーに登録された特定の管理者だけが、ネットワーク機器にログインして設定を変更できるようになり、セキュリティーリスクを低減できます。
ネットワーク利用のアカウンティングと課金
RADIUSは、ユーザーのネットワーク利用状況を記録し、課金に利用することもできます。 RADIUSサーバーは、ユーザーのログイン/ログアウト時刻、使用した帯域幅、アクセスしたサービスなどの情報を記録することができます。これらの情報は、ネットワーク利用状況の分析や、ユーザーごとの課金に利用することができます。
例えば、インターネットサービスプロバイダー (ISP) は、RADIUSを使用してユーザーのインターネット利用時間を記録し、従量制課金に利用することができます。
その他の用途
RADIUSは、以下のような用途にも使用できます。
- オンラインゲームのアカウント認証:ゲームサーバーへのアクセスを制御し、不正アクセスやチート行為を防止
- VoIP (Voice over IP) の認証:IP電話の利用者を認証し、不正利用を防止
- リモートデスクトップ接続の認証:リモートデスクトップ接続を許可するユーザーを制限し、セキュリティーを強化
RADIUSのメリット・デメリット
RADIUSを導入するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- セキュリティー強化
- RADIUSは、強力な認証メカニズムを提供することで、ネットワークセキュリティーを強化します。 パスワードの複雑性要件を設定したり、多要素認証と組み合わせたりすることで、より強固なセキュリティーを実現できます。
- 集中管理
- RADIUSサーバーでユーザー認証を一元管理することで、管理効率が向上します。 ユーザー情報やアクセス権限を一箇所で管理できるため、ユーザーの追加、削除、変更などの作業が容易になります。
- 柔軟性
- RADIUSは、様々な認証方式 (PAP、CHAP、EAPなど) をサポートしており、柔軟な認証システムを構築できます。 企業のセキュリティーポリシーやネットワーク環境に合わせて、最適な認証方式を選択することができます。
- PAP (Password Authentication Protocol): パスワードを平文で送信する、最も単純な認証方式です。セキュリティーレベルは低いため、安全なネットワークでは使用すべきではありません。
- CHAP (Challenge-Handshake Authentication Protocol): パスワードをハッシュ化して送信する認証方式です。PAPよりも安全ですが、辞書攻撃などの攻撃に対して脆弱です。
- EAP (Extensible Authentication Protocol): 拡張性のある認証方式で、様々な認証方法をサポートしています。EAP-TLS、EAP-TTLS、EAP-FASTなど、多くのEAP方式があります。 EAP-TLSは、TLS (Transport Layer Security) を使用して認証を行う、最も安全なEAP方式です。
- RADIUSは、様々な認証方式 (PAP、CHAP、EAPなど) をサポートしており、柔軟な認証システムを構築できます。 企業のセキュリティーポリシーやネットワーク環境に合わせて、最適な認証方式を選択することができます。
- 拡張性
- RADIUSは、大規模なネットワークにも対応できる拡張性を備えています。 ユーザー数、リクエスト数、ネットワーク規模の増加に合わせて、RADIUSサーバーの能力を増強することができます。
デメリット
- 導入・設定の複雑さ
- RADIUSサーバーやクライアントの設定は複雑で、専門知識が必要です。
- 運用管理の手間
- RADIUSサーバーの運用管理には、定期的なメンテナンスやセキュリティー対策が必要です。サーバーの監視、ログの確認、ソフトウェアのアップデートなどを定期的に行う必要があります。
- コスト
- RADIUSサーバーの導入や運用には、コストがかかります。サーバーの購入費用、ソフトウェアのライセンス費用、運用管理費用などを考慮する必要があります。
Q&A
Q. RADIUSとTACACS+の違いは何ですか?
A. RADIUSとTACACS+はどちらもネットワークアクセス認証に使用されるプロトコルですが、いくつかの違いがあります。RADIUSは主にネットワークアクセス認証に使用されるのに対し、TACACS+はネットワーク機器の管理アクセス制御にも使用されます。 また、RADIUSはUDPを使用するのに対し、TACACS+はTCPを使用します。さらに、RADIUSは認証と認可を同時に行うのに対し、TACACS+は認証と認可を別々に行うことができます。
Q. RADIUSは安全ですか?
A. RADIUSは、強力な認証メカニズムを提供することで、ネットワークセキュリティーを強化します。ただし、RADIUSサーバー自体が攻撃された場合セキュリティーが侵害される可能性があるため、RADIUSサーバーのセキュリティー対策を適切に行うことが重要です。 具体的には、RADIUSサーバーをファイアウォールで保護したり、定期的にセキュリティーパッチを適用したりする必要があります。また、RADIUS通信を暗号化するために、IPsecやVPNを使用することも有効です。
RADIUSは、辞書攻撃やDoS攻撃 (Denial-of-Service attack) などの攻撃を受ける可能性があります。 辞書攻撃は、攻撃者が一般的なパスワードのリストを使用してユーザーアカウントに不正にアクセスしようとする攻撃です。DoS攻撃は、RADIUSサーバーに大量のリクエストを送信することで、サーバーをオーバーロードさせ、サービスを停止させる攻撃です。これらの攻撃からRADIUSサーバーを保護するために、強力なパスワードポリシーを設定したり、ファイアウォールで不正なトラフィックを遮断したりする必要があります。
Q. RADIUSの導入にはどれくらいの費用がかかります?
A. RADIUSサーバーの導入費用は、製品やサービスによって異なります。オープンソースソフトウェアであれば無料で利用できますが、商用製品の場合はライセンス費用が必要です。また、RADIUSサーバーの構築や運用管理に必要な費用も考慮する必要があります。具体的には、サーバーのハードウェア費用、ソフトウェアのインストール費用、設定費用、運用管理費用などが挙げられます。
Q. RADIUSの導入を検討していますが、何から始めれば良いですか?
A. まずは、RADIUSについての基本的な知識の習得を目指しましょう。本記事や他の資料を参考に、RADIUSの仕組みやメリット・デメリットを理解します。次に、自社のネットワーク環境やセキュリティー要件を分析し、RADIUSを導入することでどのような効果が期待できるかを検討しましょう。そして、RADIUSサーバーの選定を行い、導入計画を立てます。必要に応じて、専門業者に相談することも有効です。
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