DNS Summer Day 2018
本記事は、DNS Summer Day 2018で発表した内容を記事として書き起こし、加筆修正したものです。
目次
BINDとは
世界で一番沢山使われているOSS(オープンソースソフトウェア)DNSサーバー(ソフトウェア)です。インターネット黎明期に開発され、繰り返し修正されているので、コードが複雑で脆弱性が潜みやすいと言われており、今日でも毎年10件近い脆弱性が見つかっています。
XACK DNSとは
純国産100%自社開発のDNSサーバー(ソフトウェア)です。プログラムのモジュール化より、軽快な動作、可用性の向上、容易な機能追加を実現します。セキュリティ重視のフルスクラッチ自社開発の為、脆弱性の影響がなく、大手国内キャリアを始め、通信事業者を中心に活用頂いています。
BINDをXACK DNSに置き変えてみよう!

更改要件
- 現在はOSS(オープンソースソフトウェア)のBINDだが、次期システムはサポートのしっかりした商用製品を希望
- 権威サーバーとキャッシュサーバー(フルサービスリゾルバー)を、1台のサーバーで共用したい(権威キャッシュ共用を現IPで継続したい)
- 上図①②③全てのパターンが可能なDNSソフトウェアが必要
そうだ! XACK DNSなら全部できる!
動作確認
BINDは懐が深くて、やさしくて、(適当で)、学ぶことが多くありました!
【事例1:ゾーン転送】
よくあるシーケンス

ケース1: 色々応答してくれない

ケース2: RR毎にDNSパケットを分割する。ID違いで

ケース3: AXFR応答の最初と最後のSOAが違う

対処: 色々失敗してもフォールバック、応答のチェックを許容的に

【事例2:ゾーンファイル読み込み】
ケース4: 委任先のグルーがない

- 委任先内部名のグルーがないと委任先の権威サーバーのIPアドレスが分からずその先の問い合わせができない。
- 設定でそのようなゾーンファイルを許容できる機能を追加(推奨しません)
ケース5: TTLが10進数でない
RFC1035 5.1項では以下のように書かれています。

→TTLは10進数の整数である。
しかし色々なゾーンファイルを見てみると…

SOAのRDATAでこんなの見たことある!→TTLでも許容するようにしました。
【事例3:メッセージ圧縮】
- この応答の違い、分かりますか?

- メッセージサイズが違う!

同一の名前が存在する場合、他方を参照するポインターを設定することで圧縮することが出来ます。

ケース6:後方参照圧縮

→ “example.jp.”のPTRレコードを問い合わせると…
drillの場合

digの場合


→BINDは(2)の解釈に失敗しますが、Unboundは対応しているようです。
【事例4:誰も守っていないRFC】
ケース7: 応答のEDNS0のサイズ
RFC6891 6.1.2項では以下のように記載されています。

OPT RRのCLASSフィールドには「要求者」、つまるところクエリを送信した側のUDPペイロードサイズを設定するように定められているようです。
(昔はsender’s UDP payload sizeでした)。
尚、実際の所誰も守っていません。皆さん自身のサーバーの設定を返すようです。

これらの事例を受けて
- RFCに書かれていること、書かれていないこと含めて様々な想定外の動作、差分があることが判明
- 差分を洗い出したい!
- どうやって?
- 全通り試せばいい(白目)
- 対象となる通信

- やったこと
- ヘッダーについては概ね全通り試せる。

- COUNTはRRの数に依存するので、気にしなければならないのは先頭32ビットだけ、しかもうち16ビットはID
- 質問部の数については0個、1個、2個で試す(2個以上の質問部をサポートしていないことを想定)。

- 要求の場合、QTYPE、QCLASSは32ビットなので全通り試せる。
- 応答の場合、QNAME、QTYPE、QCLASSは要求との一致不一致の2通りに畳み込む。
- 資源レコード(回答部、権威部、追加部)はパターン分けする。
- ポジティブ応答、ネガティブ応答、委任、etc。。。
- これらから回答部、権威部、追加部のパターンを作成して組み合わせる。
- ざっくり10億通りくらい
- 現実的!!
- やりたいこと
- DNSパケットのビットレベルでの比較
- 思い付き+提供いただけたものについては実施
- 様々なゾーンファイルの読み込み
- 思い付き+提供いただけたものについては実施
- 資源レコード
- 個々のリソースレコードタイプ毎に深堀したい
おわりに
今回の経験を得てXACK DNSもよりやさしく、懐深くなりました。
今後も安心・安定してご使用いただけるソフトウェア、システムを目指して参ります。
DNSの新規構築や更改の際には、是非XACKへお声かけください。

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