DHCPとは?IPアドレスを自動で割り当てる仕組みを解説

はじめに
IPアドレスを手動で設定する煩わしさから解放!
ネットワーク管理者にとって、IPアドレスの設定は非常に重要な作業です。しかし、一台一台手動で設定するのは面倒で、ミスも発生しやすいものです。
例えば、新しい社員が入社するたびに、PCにIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイなどを設定する必要があります。設定ミスがあると、PCがネットワークに接続できず、業務に支障をきたす可能性もあります。
「DHCP」は、このようなIPアドレス設定の煩わしさから解放してくれる技術です。DHCPサーバーを構築することで、ネットワークに接続するデバイスに自動的にIPアドレスなどのネットワーク情報を割り当てることができます。 近年、IoTデバイスの増加に伴い、ネットワークに接続するデバイスは爆発的に増えています。このような環境では、DHCPの役割はますます重要になっています。DHCPを利用することで、多数のデバイスに効率的にIPアドレスを割り当て、ネットワーク管理を簡素化できます。
DHCPの基本
IPアドレスを自動で割り当てる仕組み
DHCPは、「Dynamic Host Configuration Protocol」の略で、動的にホスト設定を行うためのプロトコルです。DHCPサーバーは、ネットワークに接続するデバイスに対して、IPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーアドレスなどのネットワーク情報を自動的に割り当てます。
DHCPに関わる主な用語は以下の通りです。
- DHCPサーバー
- IPアドレスなどのネットワーク情報を管理し、クライアントに割り当てるサーバー
- DHCPクライアント
- DHCPサーバーからIPアドレスなどのネットワーク情報を受け取るデバイス(PC、スマートフォンなど)
- IPアドレスプール
- DHCPサーバーがクライアントに割り当てるために管理しているIPアドレスの範囲
- DHCPリレーエージェント
- 異なるサブネット間でDHCPリクエストを転送する役割を持つネットワークデバイス(DHCPクライアントとDHCPサーバーが異なるサブネットに存在する場合に必要)

DHCPv4によるIPアドレス割り当てプロセスは、以下の4つのステップで行われます。
- DHCP Discover
- DHCPクライアントがネットワークに接続すると、DHCPサーバーに対して「IPアドレスをください」というリクエストを送信します。このリクエストはブロードキャストで送信されるため、同じネットワークセグメント上のすべてのデバイスに届きます。
- DHCP Offer
- DHCPサーバーは、クライアントからのDiscoverメッセージを受け取ると、IPアドレスプールから未使用のIPアドレスを選択し、「このIPアドレスを使ってください」というオファーをクライアントに送信します。このオファーもブロードキャストで送信されます。
- DHCP Request
- DHCPクライアントは、DHCPサーバーからのOfferメッセージを受け取ると、「このIPアドレスを使います」というリクエストを送信します。このリクエストは、特定のDHCPサーバーに向けて送信されます。
- DHCP ACK: DHCPサーバーは、クライアントからのRequestメッセージを受け取ると、「このIPアドレスの使用を許可します」というメッセージをクライアントに送信します。これにより、クライアントはDHCPサーバーから割り当てられたIPアドレスを使用できるようになります。
DHCPでは、IPアドレスのリースという概念があります。リースとは、DHCPクライアントがIPアドレスを使用できる期間のことです。リース期間が過ぎると、クライアントはDHCPサーバーにIPアドレスの更新を要求する必要があります。リース期間はDHCPサーバーによって設定され、一般的には数時間から数日です。
DHCPのメリット・デメリット
DHCPを導入する主なメリットは以下の通りです。
- 管理コストの削減
- IPアドレスを手動で設定する必要がないため、管理者の作業負担が軽減されます。
- 設定ミス防止
- IPアドレスの重複や設定ミスを防ぐことができます。
- 柔軟なネットワーク構成
- デバイスの移動や追加が容易になります。
一方、DHCPのデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
- セキュリティーリスク:
- DHCPサーバーが不正アクセスを受けると偽のIPアドレスが割り当てられる可能性があり、中間者攻撃などのセキュリティー脅威につながる可能性があります。
- IPアドレス枯渇:
- IPアドレスプールが不足すると、新しいデバイスにIPアドレスを割り当てることができなくなります。
DHCPを導入する際は、これらのメリット・デメリットを考慮し、適切なセキュリティー対策を講じる必要があります。例えば、DHCPスヌーピングなどのセキュリティー機能を有効にすることで、不正なDHCPサーバーからの攻撃を防ぐことができます。また、IPアドレスプールを適切に設計することで、IPアドレス枯渇を防げます。
DHCPサーバーの種類
DHCPサーバーを構築するにあたって様々なOSやネットワーク機器を利用できます。ここでは代表的なDHCPサーバーの種類を紹介します。
DHCPサーバー の種類 | 説明 | メリット | デメリット |
Windows Server | Windows Serverに標準搭載されているDHCPサーバー機能 | GUIで簡単に設定できる | Windows Serverのライセンス費用が必要 |
Linux (ISC DHCP) | Linuxで広く利用されているDHCPサーバーソフトウェア | 高機能で柔軟な設定が可能 | コマンドラインでの操作が必要 |
ルーター | 市販のルーターに搭載されているDHCPサーバー機能 | 設定が簡単で導入しやすい | 機能が限定的 |
DHCPの応用
IPアドレス以外の情報も自動設定
DHCPサーバーは、IPアドレス以外にも、DNSサーバーアドレス、デフォルトゲートウェイ、タイムサーバーアドレス、NTPサーバーアドレスなどのネットワーク情報をクライアントに割り当てることができます。
例えば、社内のDNSサーバーアドレスをDHCPサーバーで設定しておけば、クライアントは自動的に社内DNSサーバーを利用できます。また、NTPサーバーアドレスを設定することで、クライアントの時刻同期を自動化できます。
まとめ
DHCPは、ネットワーク管理を効率化する上で非常に有効な技術です。IPアドレスの自動割り当てによって、管理者の作業負担を軽減し、設定ミスを防げます。特に、IoTデバイスの増加に伴い、DHCPの重要性はますます高まっています。
近年では、IPv6の普及に伴い、DHCPv6と呼ばれるDHCPの次世代バージョンが利用されるようになってきています。DHCPv6は、IPv6アドレスの自動割り当てに加え、セキュリティー機能の強化などが図られています。
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